伊東温泉は、東京から行きやすい本格温泉地のひとつでありながら、過小評価されがちな存在でもあります。静岡県・伊豆半島の東海岸に位置し、伊東の湧出量は全国でも有数で、総湧出量は全国第3位を誇ります。それにもかかわらず、多くの海外旅行者は素通りしてしまいます。
このコンパクトな海辺の温泉街には、250円から入れる共同浴場、1928年築の木造浴場建築、リフトで登る休火山、迫力ある海岸絶壁、そしてSHOGUNの実在の時代背景につながる歴史までそろっています。このガイドでは、伊東温泉への行き方、到着後の楽しみ方、そしておすすめの宿泊先をわかりやすくご紹介します。

東京から伊東温泉へのアクセス
伊東は東京から本当に約100分で行ける温泉地で、列車を選べば乗り換えも不要です。
特急踊り子(いちばん簡単)
JR特急踊り子は東京駅から伊東駅まで直通で運行しており(品川・横浜にも停車)、所要時間は約100分。指定席で片道およそ4,000円です。列車はそのまま海岸沿いを南下して伊豆急下田まで向かうため、伊東・下田方面行きの車両かどうかを念のため確認しましょう。きっぷは東京・上野・新宿のJR東日本みどりの窓口、または指定席券売機で購入できます。
サフィール踊り子(景色も楽しむ贅沢旅)
全車グリーン車のサフィール踊り子も同じルートを約100分で結びますが、大きな窓、ゆったりした座席、ヌードルバー付きで、移動時間そのものを楽しみたい方にぴったりです。料金は通常の踊り子よりかなり高めで、週末はプレミアム席から早く埋まります。
節約派向け:熱海経由の普通列車
東京から熱海まではJR東海道線で移動し(普通・快速で約1時間50分)、そこからJR伊東線に乗り換えて約25分で伊東へ到着します。時間はかかりますが料金は安く、自由度も高め。伊東線は海沿いの景色も楽しめます。
JRパスは使える?
はい、ジャパン・レール・パスは踊り子の伊東まで利用可能です(伊東から先の下田方面は私鉄の伊豆急行線のため、別途料金が必要です)。JRパス利用中なら、伊東は実質無料で立ち寄れる小旅行先です。
伊東で楽しみたいこと
伊東の見どころは、大きく2つのエリアに分かれます。駅周辺から松川沿いに広がる徒歩観光エリアと、バスで20〜30分南へ行った火山地形の海岸エリアです。
共同浴場でひと風呂

伊東の魅力の中心にあるのは、なんといっても温泉です。市内にはおよそ10か所の共同浴場があり、入浴料は約250円。高級温泉旅館よりはるかに手頃で、日本らしいローカルな温泉体験ができます。設備はシンプルですが、お湯は熱め(伊東の湯は静岡県内でも高温で知られます)で、地元の常連客の姿も。タオルは持参するか、受付で購入しましょう。
気軽に入りやすいのは湯川弁天の湯。伊東駅から徒歩4〜5分、住宅街の目立たない路地奥にあります(350円、14:00〜22:00、水曜定休)。小さな弁天様の像、部屋の中央にあるレトロなタイル張りの浴槽、そして約42℃の源泉がそのままかけ流しという、観光地の大型温泉とは対照的な一軒です。加温・添加物なしの無色透明でややアルカリ性のお湯が楽しめます。シャワーやシャンプーはないので、タオルと石けんを持参しましょう。観光客より地元の人と一緒に湯船を囲む雰囲気です。200mほど先には松原大黒天神の湯もあり、もう一湯楽しむのにもぴったりです。
東海館 — 1928年築の浴場建築

東海館は、伊東を代表する景観のひとつ。松川沿いに建つ1928年築の3階建て木造元旅館で、現在は資料館として公開されています(200円、9:00〜21:00)。職人技が光る客室や館内を自由に見学でき、さらに見逃せないのが追加500円で入れるレトロなタイル風呂(11:00〜19:00、実施日は変動)です。建築的価値の高い歴史建築の中で入浴できる場所は、日本でもそう多くありません。
大室山

駅から南へ20分ほどの場所にある大室山は、見事なお椀型をした休火山です。リフトで標高580mの火口縁まで上がると、約30分で一周でき、伊豆半島や太平洋、晴れた日には富士山まで見渡せます。なお、徒歩での登山は禁止されており、山頂へはリフトのみでアクセスできます。
大室山は約4,000年前に一度だけ噴火したスコリア丘の休火山で、それ以降は噴火していないため、安心して訪れることができます。リフトで登るあの美しいお椀型の地形は、その一度の噴火によって生まれたものです。
城ヶ崎海岸

城ヶ崎海岸は、大室山の古い溶岩が海へ達して生まれた景勝地。ギザギザとした断崖、松林、深い青の海が約9kmにわたって続きます。見どころは断崖を結ぶ門脇つり橋と灯台展望台。短い橋周辺の散策なら1時間以内、海岸遊歩道を長めに歩くこともできます。大室山と城ヶ崎海岸は近いので、半日でまとめて回るのがおすすめです。
松川遊歩道をのんびり散策

街に戻ったら、柳並木が続く松川遊歩道を歩いてみましょう。駅周辺、東海館、港をゆるやかにつないでいます。伊東は多くの文人に愛された町で、ノーベル文学賞作家の川端康成も伊豆の踊子の執筆時に滞在したことで知られます。川沿いには、どこか昭和初期の温泉地らしい風情が今も残っています。
ウィリアム・アダムス(SHOGUN)ゆかりの地

SHOGUNをご覧になった方なら、伊東の最も有名な人物をすでにご存じかもしれません。英国人航海士ウィリアム・アダムス――三浦按針、つまりジョン・ブラックソーンの実在モデル――は、徳川家康の命により、この地の松川河口で日本初の西洋式外洋船を建造しました。伊東では毎年8月、この功績をたたえる3日間の按針祭が開かれます。太鼓演奏、灯籠流し、そして約1万発の花火が湾上を彩るフィナーレは、伊豆でも有数の夏の大イベントです。なお、2026年は80周年の特別開催で、通常の倍の花火に加え、特別観覧席のチケットも用意されます。年間を通じてほかにもさまざまなイベントがあるので、事前にカレンダーを確認しておくのがおすすめです。
家族連れに:伊豆ぐらんぱる公園
伊豆ぐらんぱる公園では、昼はジップラインやゴーカート、各種アトラクションが楽しめ、夜は季節限定でグランイルミのイルミネーションイベントが開催されます。
日帰り?それとも1泊?
伊東は東京から日帰りでも十分可能です。片道100分という近さで、首都圏から行ける本格温泉地の中でもかなりアクセス良好です。ただし、伊東の魅力をしっかり味わうなら1泊がおすすめ。共同浴場は夕方以降が雰囲気抜群で、旅館の夕食では伊豆の海の幸を堪能でき、大室山と城ヶ崎海岸も時間に追われず楽しめます。結論:時間がなければ街歩きは日帰りでOK。本当の温泉街らしさを味わいたいなら1泊がおすすめです。個人的には、伊東ではぜひ最低1泊してほしいところです。
伊東温泉のおすすめ宿
伊東緑涌

伊東緑涌は、街で最もプライベート感のある宿。客室はわずか7室で、すべての部屋に自家源泉かけ流しの庭園露天風呂が付いています。館内の雰囲気はあえて昭和レトロに整えられ、夕食・朝食ともに部屋食(金目鯛が名物)。さらに、伊東では珍しい飲泉所まで備えています。温泉旅行では誰とも湯船を共有せず、ほとんど部屋から出たくない――そんな理想にぴったりの一軒です。[宿の詳細を見る →]
青山やまと

青山やまとは、伊東らしい王道の高台旅館。全42室が街を見下ろす立地にあり、相模湾まで見渡せます。3つの混合泉を使った大浴場は24時間利用可能で、露天風呂付き客室も複数あり、ほかの宿泊者向けには貸切風呂も用意。部屋食の会席料理としっかりしたコンシェルジュ対応があり、東京の高級宿ほど高額ではないのに、初めての旅館泊にも安心して選べる洗練された一軒です。[宿の詳細を見る →]
伊東ホテル聚楽

伊東ホテル聚楽は、眺望重視ならこちら。10階建てのリゾートホテルで、全室オーシャンビュー、バルコニーには足湯付き。露天の源泉風呂では、伊東の弱アルカリ性で肌あたりのやわらかい湯を、海を一望しながら楽しめます。上層階の上質な客室には専用露天風呂付きのタイプも。広さ(39〜88㎡)、設備、そして朝いちばんの海景色を重視するなら、小規模旅館よりこちらがおすすめです。[宿の詳細を見る →]
望海庵

望海庵は、旅館の常識を少し外した一棟貸しの宿。旅館の一室ではなく、家を丸ごと借りるスタイルです。伊豆高原の高台に建ち、海を望むテラス付き。畳の部屋とロフト寝室に加え、天然温泉の檜風呂を24時間いつでも専用で使えます。入浴時間の制限もなく、他人と一緒になることもなく、タトゥーも問題ありません。キッチン付きで朝食も用意されるので、家族旅行や友人グループで、自分たちのペースで温泉滞在を楽しみたい方に最適です。[宿の詳細を見る →]
伊豆Cocoグランピングリゾート

伊豆Cocoグランピングリゾートは、畳の旅館ではなく温泉だけを楽しみたい旅行者向け。相模湾を見下ろす高台に、ホテル品質のドームテントとベルテントが6棟並び、各棟にエアコン、専用シャワー・トイレ、星空の下でBBQディナーを楽しめるウッドデッキを完備。さらに、天然温泉の貸切風呂も追加料金なしで利用できます。伊東でもひときわ個性的な温泉体験で、子どもたちの思い出にも残るはずです。[宿の詳細を見る →]
伊東のベストシーズン
伊東は一年を通して楽しめます。6月下旬〜7月上旬は城ヶ崎のあじさいと比較的人の少ない時期、8月は按針祭の花火、秋は大室山から富士山が見えやすく、冬は露天風呂がいちばん気持ちよく、街も最も静かです。松川沿いの桜の季節は短いながらも美しく、見逃せません。伊東は東京近郊の定番旅行先なので、混雑が苦手なら夏の週末は避けるのが無難です。
伊東温泉 FAQ
伊東温泉は行く価値がありますか? はい。特に、東京から2時間以内で行ける本格的かつ手頃な温泉地を探している方にはおすすめです。伊東は温泉湧出量が全国第3位で、250円の共同浴場があり、大室山や城ヶ崎海岸といった見どころも充実しています。
東京から伊東へはどう行けばいいですか? 東京駅からJR特急踊り子の直通列車を利用すれば、約100分、料金はおよそ4,000円です。節約したい場合は東海道線で熱海まで行き、JR伊東線に乗り換える方法もあります。JRパスは伊東まで有効です。
伊東と熱海、どちらがおすすめですか? 熱海のほうが近く(新幹線で1時間未満)、より都市的な雰囲気です。一方、伊東は小規模で物価も比較的手頃、昔ながらの温泉街らしさがより感じられます。大室山や城ヶ崎海岸へのアクセスも伊東のほうが便利です。リゾートホテルで週末を過ごすなら熱海、温泉街の風情を重視するなら伊東がおすすめです。
伊東は東京から日帰りできますか? はい。片道100分なので十分可能です。ただし、温泉、旅館の食事、海岸の景勝地までしっかり楽しむなら、やはり1泊がおすすめです。
伊東は何で有名ですか? 豊富な温泉湧出量、1928年築の東海館、大室山のリフトで登る火口、城ヶ崎海岸、そしてウィリアム・アダムス(三浦按針、SHOGUNの英国人主人公の実在モデル)が日本初の西洋式船を建造した地として知られています。
伊東の温泉はタトゥーOKですか? 施設によって方針は異なります。小さな共同浴場は大型ホテルより柔軟なことも多く、いくつかの旅館では貸切風呂が利用できるため、その点を気にせず楽しめます。たとえば望海庵はタトゥーフレンドリーです。
伊東は伊豆半島周遊の最初の立ち寄り先にぴったりですが、より充実した旅にするなら、いつものおすすめとして熱海、修善寺、そして下田も組み合わせるのがおすすめです。
